イベント
中央ステップ

<新しい介護予防のカタチを提案 大田信也さん>

館長の種田が、いま一番会ってみたい人、皆さんにぜひ知ってもらいたい人をお招きしてお話しします。

10月のゲストは、ハートケア&ファームを運営する(株)ソトエの大田さん。

新しい介護予防の形を模索し、農作業療法や医食農連携を取り入れたデイサービス【ハートケア】を展開。

"みんなで土をいじり、収穫した野菜を料理し、食べる"という活動を通した、健康維持や介護予防の取り組みに迫ります。

日時:10月15日(土) 14:00~15:00

場所:まちなか図書館2F 中央ステップ

ゲスト:大田信也さん(株式会社ソトエ取締役)

定員:50名(先着順・参加無料)

レポート

「介護予防」や「健康寿命」といった言葉を、最近よく目にするようになりました。

では、「農作業療法」という言葉はどうでしょうか?なんとなく意味は分かるけれど、あまり馴染みがないという方が多いのでは。

これまでにあまり例がない新しい取組み。しかし、話を聞けば聞くほど、日本人の暮らしの原点に立ち帰るような、古くて新しい挑戦がありました。

対談冒頭は、「ハートケアとは何か?」という質問でスタート。

今年2月に始まったばかりの介護予防通所サービスであること、豊橋ハートセンターのグループ施設であり、医療ケアの部分をハートセンターが担っていること、一番の特徴であるグリーン・リハ(農作業療法)の内容や効果についてお聞きしました。

健康維持やストレス軽減といった効果は、一見、山登りなどのアウトドアと同じように感じますが、年間を通して野菜を育てることで季節を感じたり、愛着を持ったり、種まきから収穫までの3か月先・半年先を楽しみに過ごせるようになるなど、グリーン・リハならではの効果があることがわかりました。

そして何より、無農薬で育てられた旬の野菜を食べることで、健康の土台となる食の改善につながります。

次の質問は、なぜ「未病」や「予防」を目的としたデイサービスに舵を切ったのか。

通常、デイサービスというのは要介護認定を受けた人を対象とするもの。しかし、「ハートケア」は要支援の方を対象とし、要介護になることを予防することを目的としています。

そこには、ハートセンターでの経験が関係していました。生活習慣が原因で入退院を繰り返す患者さんが多く、退院後の生活改善をサポートしたり、そもそも病院に通わずにすむような地域の人の健康維持に寄り添える場所を作りたいという現場の想いがあったそうです。

スクリーンに映し出された写真からは、畑での収穫作業やキッチンでの料理を楽しむ利用者の方の様子がわかり、いわゆる”施設”のイメージとは異なる印象を受けました。畑でお弁当を食べたときのエピソードがまたなんとも素敵で。「施設の中で過ごすだけでは生まれなかった助け合いや交流が生まれるのが、畑の不思議なチカラ」という大田さんの言葉が印象的でした。

最後は、ハートケアが大切にしている「有機栽培」という選択について。

農薬や化学肥料を使わず、土づくりに重きを置いた自然に近い環境での野菜作り。敷居の高い印象がありますが、実はとてもシンプルです。

自分たちが食べられる分だけを、野菜の旬に合わせて栽培する。大量生産・大量消費など便利さばかりを追求する生き方とは一線を画す、古くて新しい選択だと感じました。また、改めて豊橋という土地の豊かさを実感しました。

ハートケアで使用している農園の一部は、一般の方向けの貸農園としても提供されています。新しい農地の活用法として、また様々な世代の人がつながる場としても期待ができそうです。貸農園については参加者の方からも質問がありました。世代を問わず、こうした場に関心を持つ方が増えているのかもしれません。

ゲストのおすすめの一冊をお聞きしました。

「土と内臓」 デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー(築地書館株式会社、2016)

副題「微生物が作る世界」からも分かるように、微生物の知られざる役割や重要性を紐解いた一冊。

「私たちの健康や生活は、自然と共生することで成り立っていることを思い出させてくれる本」と話されていました。

大田さん、どうもありがとうございました。

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